国際動向の把握

実施機関:産業技術総合研究所 安全科学研究部門 及び 慶應義塾大学 医学部

最終目標:OECD/WPMN(工業ナノ材料作業部会)やISO/TC229(ナノテクノロジー専門委員会)といった国際機関での標準化等に関する議論や、米国やEU等における規制動向を随時モニタリングし、プロジェクトメンバー等に発信します。また、プロジェクトにおいて得られた成果を、上記の国際機関等の議論に適時的かつ効果的に発信します。

主な成果:
OECDへの私達のプロジェクト成果の発信

(1)OECD吸入テストガイドライン(TG)改正作業への貢献

WPMNの下で米国EPAが主導した吸入TG改正SPSF(作業提案書)作成作業に、2013年5月からプロジェクトメンバーが参加し、気管支肺胞洗浄(BAL)分析の必須化等に貢献しました。このSPSFは、2013年11月にWPMNからWNT(TG作業部会)に提出され、2014年4月のWNT第26回会合で採択されました。

2015年5月にWNTに設けられた吸入TG改正専門家グループ(議長:米国EPA)にプロジェクトメンバーが参加しています。専門家グループは、まず、TG 412(亜急性吸入毒性:28日間試験)及びTG 413(亜慢性吸入毒性:90日間試験)の改正案の作成に注力し、肺負荷量測定の実施可能性も検討します。次に、急性吸入毒性試験に関するガイダンス文書(GD)39の改正案も作成する見込みですが、そこで、注入や送気による投与について記述を加えることが提案されています。

【外部リンク→OECD-TG(第4章:健康影響)のダウンロードサイト

【外部リンク→OECD-GDのダウンロードサイト

(2)WPMN専門家会合での私達のプロジェクト成果の発表

WPMN/SGTA(試験評価プロジェクト運営グループ)の下で、代表的工業ナノ材料のための安全性試験スポンサーシッププログラムで得られた経験を踏まえ、一般化学物質のために制定されたTGのナノ材料への適用可能性を検討するため、一連の材料横断的ワークショップ(専門家会合)が開催されました。そのうち、ナノ材料のトキシコキネティクスに関する専門家会合(2014年2月韓国ソウルで開催)及びナノ材料のカテゴライゼーションに関する専門家会合(2014年9月米国ワシントンDCで開催)で、プロジェクトメンバーが以下のテーマでプロジェクト成果を発表しました。

蒲生昌志 Intratracheal Administration Study for Initial Characterization of Toxicokinetics of Nanomaterials

蒲生昌志 Development of Equivalence Criteria for Nanomaterials by Intratracheal Administration Study

両専門家会合の結果報告書は、2016年に一般公開される見込みです。

さらに、吸入毒性試験専門家会合(プロジェクト開始から間もない2011年10月にオランダ・ハーグで開催)では、プロジェクトメンバーが以下のタイトルで先行プロジェクトの成果を発表し、「予算・時間の制約下でナノ材料の多様性に対応する上で吸入試験と注入試験の組合せが有効である」と主張しました。

五十嵐卓也 Japan’s approach to inhalation toxicity testing of CNTs in the NEDO Project (P06041)

この専門家会合の結果報告書は、OECD工業ナノ材料の安全性シリーズとして2012年6月に一般公開されました。【外部リンク→報告書PDF 498 KB】

このほか、2015年2月のWPMN会合で、プロジェクトメンバーがin vivo吸入毒性スクリーニング試験方法に関する情報共有セミナーの開催を提案し、了承されました。気管内投与試験方法と短期吸入試験方法(BASF社が中心になって開発したもの)に関する最新の研究成果を紹介するセミナーです。2015年9月21~22日にワシントンDCで開催される上記1)の吸入TG改正専門家グループ会合と併せて、米国EPAのホストによって開催します。


図④ WPMN会合の休憩時間の様子(2014年パリOECD本部)

(3)グルーピング・同等性・類推の概念の使用・開発に関する調査を主導
WPMN/SGAP(リスク評価規制制度プロジェクト運営グループ)の下で、プロジェクトメンバーが「規制制度でのナノ材料のヒト・生態系有害性評価のための物理化学的特性に基づいたグルーピング・同等性・類推の概念の使用・開発に関する調査」を提案し、そのプロジェクトリーダーを務めています。2013年10~12月にWPMN参加国を対象とするアンケート調査を実施し、前述の2014年9月のカテゴライゼーション専門家会合で調査結果の概要について基調講演を行いました。

調査報告書は、その案が2015年11月のWPMN会合に提出され、2016年に一般公開される見込みです。化学物質のグルーピングに関するOECD-GD 194では、同等性という概念は示されていませんが、この調査では、グルーピングや類推と共に同等性を一つの柱として取り上げており、私達のプロジェクトの成果を紹介する絶好の機会となっています。
【外部リンク→化学物質のグルーピングに関するGD PDF 1853 KB】

(4)WPMNの安全性試験スポンサーシッププログラムの下で、ドイツとフランスが共同スポンサーを務めたナノ二酸化チタンのドシエに対して、ドイツの要請に応じて、プロジェクトで実施したラットへの静脈注射による体内動態試験のデータを2013年3月末に提供しました。8ナノ材料のドシエが2015年6月9日に、銀ナノ粒子のドシエがその1週間後に、OECDのウェブサイトから一般公開されましたが、ナノ二酸化チタンのドシエは、ナノ酸化亜鉛のドシエと同じく、2015年8月1日現在、まだ一般公開されていません。【外部リンク→OECDドシエのダウンロードサイト

ISO/TC229への私達のプロジェクト成果の発信

(5)TC229/WG3(健康・安全・環境)の下で、米国NIOSH主導による技術報告書ISO/TR 18637「ナノ物体及びその凝集体のための作業暴露限界(OEL)及び作業暴露バンド(OEB)の設定の一般的枠組み」の作成作業にプロジェクトメンバーが参加し、同等性に関する記述を盛り込む等、吸入リスク評価に関する我が国の研究成果を大きく反映させました。この技術報告書は、2016年に発行される見込みです。
【外部リンク→ISO/TC229規格・プロジェクト一覧

 

論文等一覧