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研究開発項目:③(c) 培養肺胞モデル評価系の開発と数理モデル化への利用方法に関する研究開発

実施機関名:東京大学 生産技術研究所

最終目標:ヒト株細胞やラット初代培養系を用いた培養肺胞モデル評価系を開発し、そこから得られた結果から、数理モデルに利用可能な各種物理化学的・生物学的パラメータ取得の方法を確立し、併せて適切な利用方法を提案します。

ナノ粒子の体内取り込みや動態・影響発現を記述・予測するための数理モデルを精緻化するため、個体への摂取経路となる肺胞について、培養細胞からなる実験モデルを構築、そこでの障害性や透過性を簡単な数理モデルにて記述することを目指しています。

主な成果:
ヒトの株細胞を用いる肺胞モデルについては、市販の半透膜培養器(カルチャーインサート)上で、A549細胞と、THP-1細胞から分化誘導されたマクロファージ様の細胞との共培養系を確立しました。すなわち、肺胞上皮層としてのA549細胞単層の上に、肺胞マクロファージとしてのTHP-1分化誘導マクロファージ様細胞を付着させたものです。まず、ナノ粒子暴露時には、共培養系ではマクロファージが粒子を貪食することで結果的に上皮に直接暴露される粒子が少なくなり、障害性は低減されることを確認しています。また、粒子の透過性については、肺胞内部側(共培養上皮の上側)に暴露した粒子が、時間と共にどのように移行するかの実験を行いました。この実験系にて、肺胞内部・細胞層・血液側(共培養層の下側)の三つのコンパートメントの粒子存在量の時間推移は、3コンパートメント間に動的平衡を仮定した数理モデルにて、おおむね記述ができました。粒子の24時間後の透過率はおおむね数%以下で、THP-1分化誘導マクロファージ様細胞の存在によって、この率は顕著に低減しました。

一方、動物個体試験と平行して働くin vitroの評価系として、ラット初代培養肺胞モデルの構築と利用にも取り組んでいます(図③(c)参照)。ラット初代培養の場合には、精製が可能なII型上皮細胞を適切な薄い密度でカルチャーインサート上に播種することで、ほぼ実際の肺胞内部と同様に極めて薄いI型上皮の連続単層を形成することに成功しました。実際に、経上皮電気抵抗値の時間推移や最終的な細胞の形態を示します。II型を示すA549株細胞では、個別細胞の面積は小さく密な単層を形成するものの、電気抵抗値は極めて低いままでしたが、初代培養肺胞上皮細胞の場合には、1週間程度で細胞の面積が非常に大きいI型特有の形態へと変化しました。それらの細胞は肺胞のような連続した薄い単層を形成しましたが、II型様細胞のA549とは全く異なり、電気抵抗値はその10倍程度の極めて高い値をとって、そのまま1週間程度は維持されました。このように、実際の生体内の肺胞上皮と同様に、極めて薄いが高いバリアー機能をもった培養肺胞上皮の形成に成功しています。また、この上に別途採取した肺胞マクロファージを播種すると、強固に付着しそのまま安定に維持されたことから、初代培養の共培養肺胞モデルの構築に成功したといえます。

現在、様々な粒子について、障害性と透過性の実験を行い、その数理モデルでの記述・評価へと研究を進めています。

 

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図③(c) ラット初代培養肺胞モデルの構築

 

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