研究開発項目:②(c) エアロゾルの安定発生手法の構築

実施機関:広島大学大学院工学研究院

最終目標:気管内投与試験との比較を想定した吸入暴露試験のため、試験用エアロゾル粒子の濃度やサイズ、形状等の制御性の改善と制御範囲の拡張、及び吸入暴露試験時に供給するエアロゾルの性状の経時安定性の向上を図ります。最終的には吸入暴露試験用エアロゾルを得る手法の指針をとりまとめて公開します。

主な成果:

吸入暴露試験に適したエアロゾル試料の調製技術と、このエアロゾル試料を用いて吸入暴露試験を実施するための技術を検討しました。エアロゾル調製手法には既製ナノ材料のエアロゾル化手法として種々の利点を有する噴霧乾燥法を用いました。噴霧乾燥法とは、ナノ材料を含む懸濁液を噴霧してナノ材料を含む液滴とし、液滴から水を乾燥させることによって、固体粒子のエアロゾルを発生させる方法です。

エアロゾルの発生と性状評価実験のために用いた実験系を図②(c)-1に示します。マイクロ液滴発生装置を用いて、2流体ノズルにナノ材料懸濁液を送り、加圧ガスによって噴霧し液滴化しました。気流に同伴させた液滴を、加熱管に流通させました。こうした発生させたエアロゾルを種々の分析装置によって分析しました。

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図②(c)-1 実験系(エアロゾル発生装置と吸入暴露容器と種々の分析装置)

これまでに酸化ニッケルナノ粒子、二酸化チタンナノ粒子、酸化セリウムナノ粒子の懸濁液を用いたエアロゾル発生の実験的検討を行いました。液試料性状や発生操作に係る諸条件がエアロゾル粒子のサイズ、形態、濃度等に及ぼす影響を評価しました。また、噴霧乾燥法の改良として、単極荷電による液滴破砕と液滴の迅速な蒸発操作が、エアロゾル粒子の小粒子径化と高質量濃度化に特に有効であることを示しました。

多価荷電された液滴は静電斥力が表面張力よりも高くなり、液滴が破砕されるCoulomb爆発と呼ばれる現象を利用し、高濃度の単極気中イオンで液滴を荷電、破砕させることで、より小さなナノ材料懸濁液液滴を発生させ、したがって、より小さなエアロゾル粒子を発生することが可能となりました。また、気流に乗らず配管内で慣性衝突によって損失してしまうほど大きな液滴を、噴霧直後に加熱することによって、損失する前に蒸発を促進して小さくすると、配管内での損失が抑制されたため、エアロゾル粒子の気中質量濃度を高くすることができました。

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図②(c)-2 酸化ニッケルナノ粒子のエアロゾル粒子のSEM写真
(a) 改良前、(b) 改良後(液滴破砕+迅速蒸発併用)

改良したエアロゾル発生実験系を吸入暴露試験容器に接続し、1日6時間、20日間で供給することで吸入暴露試験を実施しました。暴露容器内のエアロゾル粒子の平均粒子径は100 nm程度、気中質量濃度は約2又は約10 mg/m3で、試験期間中安定的に供給できることを示しました。

 

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