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研究開発項目:①(a) 気管内投与試験によるナノ材料の相互比較による同等性判断基準の構築

実施機関:一般財団法人化学物質評価研究機構

最終目標:ナノ材料は物質を構成する元素やその比率が同一であってもサイズ(粒子径)、形状等の物理化学的特性の異なる様々な材料が存在し、これらの物理化学的特性の違いによって有害性が異なる可能性が懸念されています。このため、各ナノ材料について個別に有害性評価が必要と考えられますが、そのためには多大な費用と労力を必要とします。本研究では、物理化学的特性の異なる複数のナノ材料の肺への有害性の違いを評価するため、ラットを用いた気管内投与試験を行い、有害性データ(気管支肺胞洗浄液の検査、肺の病理組織学的検査)を取得することで、ナノ材料の物理化学特性の違いによる肺有害性の違いを明らかにし、ナノ材料の物理化学特性の違いが肺有害性に影響を与えずに同等の材料であるとみなせる範囲=同等性判断基準をとりまとめて公開することを目指します。

主な成果:
粒子径、形状、表面処理等の物理化学的特性が異なるナノ材料である7種類のTiO2、7種類のSiO2、4種類のNiOについて、F344ラット(雄、12週齢)を用いた気管内投与試験を行いました。各ナノ材料を1回気管内投与した後、投与3日後、28日後及び13週後に肺の炎症を指標とする有害性データを取得しました。

TiO2では、形状及び結晶型(ルチル又はアナターゼ)の違いによる差はほとんどみられませんでした。一方、粒子径の違いは、投与3日後において投与液中の粒子径が小さい材料で肺有害性が強くみられ、肺有害性の差に寄与する可能性が示唆されました。また、Al(OH)3の表面処理された材料では、肺有害性が投与28日後以降も経続してみられ、表面処理が長期的な肺有害性の差に寄与する可能性が示唆されました(表①(a)-1)。表面処理されていない材料では、投与28日後以降の肺有害性は消失していました。

表①(a)-1 TiO2の同等性判断基準の暫定案

物理化学的特性 肺有害性への影響
粒子径 二次粒子径が急性期の肺有害性の差に寄与する可能性有り
形状 ほとんど影響無し
表面処理 急性期及び急性期以降の肺有害性の差に寄与する可能性有り
結晶型 ほとんど影響無し

 

SiO2では、粒子径の違いは、投与3日後において投与液中の粒子径が小さい材料で肺有害性が強くみられ、肺有害性の差に寄与する可能性が示唆されました。また、表面処理の違いは、COOH修飾された材料で投与3日後において修飾のない材料より肺有害性が弱くみられました。このことから、表面処理の違いが投与後初期の肺有害性の差に寄与する可能性が示唆されました。さらに、結晶性の違いは、非晶質の材料では投与3日後において肺有害性がみられたものの、投与28日後以降の肺有害性は回復性がみられました。一方、結晶質の材料は投与3日後において肺有害性が強くみられ、投与28日後以降も継続してみられたことから、結晶性の違いが投与後の初期又は長期的な肺有害性の差に寄与する可能性が示唆されました(表①(a)-2)。

表①(a)-2 SiO2の同等性判断基準の暫定案

物理化学的特性 肺有害性への影響
粒子径 粒子の大きさが急性期の肺有害性の差に寄与する可能性有り
表面処理 急性期及の肺有害性の差に寄与する可能性有り
結晶性 急性期及び急性期以降の肺有害性の差に寄与する可能性有り

 

NiOでは、粒子径の違いは、投与3日後おいて投与液中の粒子径が小さい材料で肺有害性が強くみられ、投与28日後以降も経続してみられたことから、粒子径の違いが投与後の初期又は長期的な肺有害性の差に寄与する可能性が示唆されました。一方、形状の違いは、繊維状の材料では投与3日後において肺有害性が強くみられたものの、投与28日後以降は回復性がみられました。一方、球状の材料は投与3日後において肺有害性が強くみられ、投与28日後以降も継続してみられたことから、形状の違いが投与後の初期又は長期的な肺有害性の差に寄与する可能性が示唆されました(表①(a)-3)。

表①(a)-3 NiOの同等性判断基準の暫定案

物理化学的特性 肺有害性への影響
粒子径 粒子の大きさが急性期及び急性期以降の肺有害性の差に寄与する可能性有り
形状 急性期及び急性期以降の肺有害性の差に寄与する可能性有り

 

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